楽譜に「♯」や「♭」が付いていると、どの音を弾けばよいか迷うことがあります。特に「黒鍵を弾く記号」と覚えていると、ピアノでもほかの楽器でも読み間違えやすくなります。
シャープ(♯)は指定された音を半音高くし、フラット(♭)は半音低くする記号です。
「半音」とは、ピアノなら隣り合う鍵盤同士の音の高さの差です。黒鍵に移るとは限らず、ミ♯はファ、ド♭はシと同じ鍵盤になります。
楽譜を読むときは、音符の位置を確かめてから、調号と臨時記号を確認します。
シャープとフラットの意味と違い
どちらも音の高さを変えるための変化記号です。音符の長さや強さを変える記号ではありません。
| 記号 | 読み方 | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| ♯ | シャープ | その音を半音高くする | ド♯=ドより半音高い音 |
| ♭ | フラット | その音を半音低くする | シ♭=シより半音低い音 |
| ♮ | ナチュラル | 同じ音名にかかっているシャープやフラットを取り消す | ファ♯ → ファ♮ |
音の名前は、例えば「ドのシャープ」「シのフラット」と読みます。英語式の音名を使う場合、ド♯はC♯、シ♭はB♭です。
「シャープは明るい音」「フラットは暗い音」という意味ではありません。ここでの違いは、基準の音から上げるか、下げるかです。
半音とは?ピアノの鍵盤で確かめる
半音は、隣り合う音の最小の間隔として西洋音楽の一般的な12平均律で扱われる単位です。ピアノでは、白鍵か黒鍵かに関係なく、すぐ隣の鍵盤へ動くと半音変わります。
黒鍵に進む例
- ド → ド♯:ドのすぐ右にある黒鍵を弾く。
- レ → レ♭:レのすぐ左にある黒鍵を弾く。
- ファ → ファ♯:ファのすぐ右にある黒鍵を弾く。
- シ → シ♭:シのすぐ左にある黒鍵を弾く。
白鍵に進む例
ミとファの間、シとドの間には黒鍵がありません。そのため、次の音は白鍵になります。
| 記号付きの音 | ピアノで弾く鍵盤 | 理由 |
|---|---|---|
| ミ♯ | ファの白鍵 | ミのすぐ右隣がファ |
| ファ♭ | ミの白鍵 | ファのすぐ左隣がミ |
| シ♯ | 次のドの白鍵 | シのすぐ右隣がド |
| ド♭ | 前のシの白鍵 | ドのすぐ左隣がシ |
「♯や♭が付いていたら必ず黒鍵」という覚え方は誤りです。まず元の音を見つけ、その音から半音分だけ動かしてください。
ド♯とレ♭は何が違う?
一般的な12平均律のピアノでは、ド♯とレ♭は同じ鍵盤で演奏できます。同様に、ファ♯とソ♭も同じ鍵盤です。このように、名前が異なっていても同じ高さとして扱われる音を「異名同音」といいます。
ただし、楽譜での名前はどちらでもよいわけではありません。音階の並び、調、和音の構成を表すために、ド♯とレ♭を使い分けます。例えばニ長調の音階は「レ・ミ・ファ♯・ソ・ラ・シ・ド♯・レ」と書き、ド♯をレ♭に置き換えると音階上の音名の並びが崩れます。
最初は「鍵盤で同じ位置になることがある」と理解すれば十分です。なぜ書き分けるかは、調や音階、コードを学ぶときに確認すると整理しやすくなります。
楽譜に出てくる2種類のシャープとフラット
♯と♭には、曲の基本的な音の並びを示す調号と、途中で特定の音を変える臨時記号という使われ方があります。見た目が同じでも、適用される範囲が違います。
調号:五線の最初にまとめて付く
ト音記号やヘ音記号の後、拍子記号の前などに置かれる♯・♭は調号です。調号で指定された音名は、原則としてその曲の該当する高さのすべての音に適用され、別の調号への変更や臨時記号による指示があるまで続きます。
- ♯が1つ(ファの位置):楽譜中のファは、原則ファ♯で演奏する。
- ♭が1つ(シの位置):楽譜中のシは、原則シ♭で演奏する。
調号は指定された音名のすべてのオクターブに効く点が重要です。
臨時記号:途中の音符の直前に付く
音符の左側に付く♯・♭・♮は臨時記号です。一般的な記譜法では、その小節内の同じ音名・同じ高さ(同じオクターブ)の後続音にも効きます。小節線を越えると原則リセットされますが、タイで結ばれた同じ音が小節線をまたぐ場合などは例外があります。
調号の可能性が高い。曲中の該当音名に広く適用する。
臨時記号。その音符から小節内の同じ高さの音までを確認する。
ナチュラル(♮)が付いたらどうする?
ナチュラルは、その音名に対して適用されている♯や♭を取り消し、元の音の高さに戻す記号です。
例えば、調号でファ♯になっている曲で、途中にファ♮が書かれたら、その音はファのまま演奏します。その小節の後続する同じ高さのファも原則ファになります。次の小節では、調号のファ♯に戻ります。
同じ小節の途中で再びファ♯にしたい場合は、改めて♯が記されます。
初心者が間違えやすい読み方と直し方
| つまずき | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 毎回、書かれた音符だけ♯にする | 臨時記号の有効範囲を見落としている | 小節内の同じ高さの後続音を確認する |
| 次の小節でも臨時記号を続ける | 小節線でのリセットを忘れている | 次の小節は調号に戻して読む(タイなどは別途確認) |
| ファ♯しか読めず、高いファを見落とす | 調号がすべてのオクターブに効くことを忘れている | 調号は音の高さではなく音名単位で確認する |
| ミ♯の黒鍵を探す | ♯=黒鍵だと思い込んでいる | 隣の鍵盤まで半音進み、ファを弾く |
| ♮があるのに調号どおり弾く | 臨時記号の優先を見落としている | その音符の左側を先に確認する |
シャープとフラットを覚える3ステップ
記号の暗記だけでなく、音を探して弾く練習を組み合わせると使いやすくなります。以下は練習の一例です。
鍵盤や鍵盤図でド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シを確認し、ド♯・レ♭・ミ♯・シ♭を探します。楽器がない場合は紙に鍵盤を描いて指で示しても構いません。
ド♯とレ♭、ファ♯とソ♭、ミ♯とファを一組ずつ見比べます。「同じ鍵盤でも書き方が違う」ことを確かめます。
ファ♯が調号にある短い楽譜を用意し、ファ♮が途中で出てきたときの変化と、次の小節での戻り方を声に出して説明します。
「シ♭はシより高い?低い?」「ミ♯はどの鍵盤?」「調号のファ♯は高いファにも適用される?」の3問に答えてみましょう。
答え:シより半音低い/ファの白鍵/適用される。
シャープとフラットは何から覚えればよい?
最初は難しい調号をすべて暗記する必要はありません。まず♯=半音上、♭=半音下、♮=変化を取り消すという3つの意味を覚えましょう。
シャープとフラットは、音を強くしたり弱くしたりする記号ではなく、音の高さを半音変える記号です。黒鍵か白鍵かは、元の音との位置関係で決まります。
今日はド♯・シ♭・ミ♯を鍵盤で確かめ、そのあと1小節だけ楽譜を読んでみてください。記号の意味を実際の音に結び付けられれば、次の曲でも迷いにくくなります。