クレッシェンドとデクレッシェンドの違い|強弱記号の読み方

楽譜に「cresc.」「decresc.」や、横に開いた・閉じたくさび形の記号が出てきたとき、どちらが大きく、どちらが小さくなるのか迷うことはありませんか。意味は覚えていても、実際の演奏では急に音量を変えてしまいがちです。

この記事の結論

クレッシェンド(crescendo)は「だんだん強く」、デクレッシェンド(decrescendo)は「だんだん弱く」演奏する指示です。一般に、強弱の記号では音量を中心に表現します。

記号の開始位置から終わりまでを使って、音の強さを段階的に変えるのが大切です。くさび形は「右に向かって広がれば強く、狭まれば弱く」と読むと覚えやすくなります。

ここでは記号の見分け方、p・fなどとの関係、楽器や歌での具体的な表現、うまく変化をつけられないときの練習方法を紹介します。

クレッシェンドとデクレッシェンドの意味・記号の違い

両方とも一定の区間で強弱を徐々に変えることを示す音楽用語です。単に「大きい音」「小さい音」を表す記号とは役割が異なります。

項目クレッシェンドデクレッシェンド
表記cresc.decresc.
意味だんだん強くだんだん弱く
くさび形左が狭く、右が広い「<」左が広く、右が狭い「>」
変化の方向現在より強い方向へ現在より弱い方向へ
よくある失敗始まった瞬間に強くする始まった瞬間に弱くする
POINT

記号の「<」「>」は音量変化の方向を示す模式的な形です。楽譜では上下の線が開閉する細長い記号として書かれます。ここでの「<」「>」は形の説明であり、実際の五線譜上の字形をそのまま再現したものではありません。

記号はどこからどこまで有効?楽譜での読み取り方

くさび形の始まりと終わりを見る

細長い「<」「>」の記号(ヘアピン)は、一般に記号が描かれている区間で少しずつ変化させる指示です。音符の下や上に書かれ、線が終わるところまでをひとまとまりと考えます。

例えば、4拍分のクレッシェンドであれば「1拍目は控えめ、2拍目で少し強く、3拍目でもう少し強く、4拍目で目標の強さへ」と考えると、突然の音量変化を避けやすくなります。これは練習用の分け方の一例で、各拍を機械的に同じ幅で変える必要はありません。

cresc.やdecresc.の文字がある場合

「cresc.」「decresc.」の文字は、そこから徐々に強弱を変えることを示します。終点は後続の強弱記号、区切り線、破線の延長など、楽譜全体の指示を確認して判断します。文字がある小節の終わりで必ず終了するとは限りません。

p・mf・fなどが並んでいるとき

p(弱く)やf(強く)は、その位置での強さを指定します。一方、クレッシェンドとデクレッシェンドはそこへ向かう過程を表します。

  • p → cresc. → f:弱いところから徐々に強くし、fを目標にする。
  • f → decresc. → p:強いところから徐々に弱くし、pへ向かう。
  • mf → cresc. → ff:中くらいの強さから、より力強い響きへ進める。

ただし、終点の記号が明記されていない楽譜もあります。その場合は前後のフレーズ、楽器の特性、合奏全体のバランスを手掛かりに、音楽的に自然な変化を考えます。

4小節の例で演奏の変化をイメージする

次の例は、各小節が4拍あると仮定した練習用の模式例です。実際の楽譜の指定と同じではありません。

小節記号の例演奏で意識すること
1p弱めの音で落ち着いて始める
2cresc. 開始少しずつ響きを広げる
3cresc. 継続盛り上がりを保ち、急に最大にしない
4f目標の強さに到達する

反対に4小節目へ向けて音を弱めたい場合は、強い状態からdecresc.を始め、終点のpなどへ向かいます。

実践の目安

「4小節なら毎小節同じだけ音量を変える」と決めつけず、曲の山場や旋律の方向に合わせて変化の速さを調整しましょう。長い音の途中でも強弱は変えられます。

楽器・歌での表現方法は同じではない

指示の意味は共通ですが、どの操作で強弱をつくるかは演奏方法によって異なります。

ピアノ・鍵盤楽器

ピアノでは、基本的に音を出す瞬間の鍵盤への打鍵の仕方で音量が決まります。弾いた後にその音自体をさらに大きくすることはできません。

  • クレッシェンド:続く音を少しずつ強く弾き、フレーズ全体を盛り上げる。
  • デクレッシェンド:続く音を少しずつ弱く弾き、自然に収める。
  • 和音が続く場合:一気にすべてを強くするのではなく、和音ごとの打鍵を調整する。

バイオリンなどの弦楽器

弓を使う弦楽器では、弓の速さ、圧力、弾く位置などの組み合わせで強弱を変えます。強くしたいからといって無理に弓を押し付けると、音がつぶれることがあります。音色が保てる範囲で少しずつ変えるのが基本です。

管楽器・歌

管楽器や歌では、息の流れと音色を安定させながら強弱を調整します。ただ息を大量に出す、喉に力を入れるといった方法では、音程や発声の安定が崩れる場合があります。音程・響きが保てているかも合わせて確認しましょう。

ギター・打楽器

ギターではピッキングやストロークの強さ、打楽器では打つ強さや奏法を、連続する音ごとに変えて表現します。減衰する単音は演奏後の音量を自由に増やせないため、複数の音を通じて強弱の流れをつくる考え方が役立ちます。

初心者向け:クレッシェンドとデクレッシェンドの練習手順

強弱記号を見てすぐ演奏できない場合は、音程やリズムの難しさを一度減らして練習します。次の手順は編集上の練習例です。

STEP 1|同じ音を4回鳴らす

弾きやすい音を、一定の拍で4回演奏します。まずはすべて同じ強さにそろえます。歌や持続音を出せる楽器なら、1つの長い音でも練習できます。

STEP 2|弱い音から強い音へ

1回目を弱く、2回目を少し強く、3回目をさらに強く、4回目を最も強くします。リズムが速くならないように気を付けます。

STEP 3|強い音から弱い音へ

同じ4回を逆向きにし、デクレッシェンドを練習します。最後の音が聞こえなくなったり、途中で急に落ちたりしないよう調整します。

STEP 4|曲の中に戻す

練習中のフレーズで、どこから変化を始め、どの音で目標の強さに達するかを決めます。録音を聴き、変化が途切れていないか確認します。

POINT

強弱の練習でテンポや音程が乱れたら、まず変化幅を小さくしましょう。大げさに弾くことより、音楽の流れを途切れさせず変えられることが先です。

よくある間違いと直し方

困りごと確認したい原因直し方
cresc.の直後だけ大きい徐々に変える指示を単発のアクセントと混同変化の始点と終点に印をつけ、間の音を段階的に変える
decresc.の途中で聞こえなくなる早い段階で弱めすぎている終点まで音を残せるよう、最初の変化を緩やかにする
音を大きくするとテンポが速くなる強さと速さを一緒に変えている手拍子やメトロノームに合わせ、拍を固定して練習する
音が荒れる・音程が不安定楽器や発声に無理が出ている力任せにせず、操作や息の使い方を見直す
どこまで強くするか分からない終点の強弱記号や文脈を見落としている次のp・fなどとフレーズの山場を確認する

似た記号・用語との違い

ディミヌエンド(dim.)との違い

ディミヌエンド(diminuendo、dim.)も一般に「だんだん弱く」を表し、デクレッシェンドとほぼ同じ意味で扱われます。細かなニュアンスを区別する解釈もありますが、初心者はまずどちらも徐々に弱くする指示として理解すれば大丈夫です。

アクセント(>)との違い

アクセント記号にも「>」に似た形があります。ただし、アクセントは通常、特定の音を際立たせるため音符の近くに付く短い記号です。デクレッシェンドのヘアピンは複数の音や長い音にまたがる細長い記号で、区間全体の変化を示します。

間違えやすいポイント

同じ「>」に見えても、音符1つに付いている短い記号か、区間にまたがる長い記号かで意味が変わります。形だけでなく、記号の長さと配置を確認してください。

スフォルツァンド(sfz)との違い

sfzは、その位置の音を急に強調する指示です。「だんだん強く」というクレッシェンドとは違い、瞬間的な強調が中心です。クレッシェンドの終点に強いアクセントが置かれることもあるため、両方の指示を見落とさないようにしましょう。

演奏前に確認したい3つのポイント

強弱記号を見つけたときの確認順
1.方向

右へ広がる「<」なら強く、右へ狭まる「>」なら弱く。文字表記ならcresc.とdecresc.を確認します。

2.範囲

変化を始める音と、変化を終える音を確認します。文字表記の場合は後続の指示も見ます。

3.到達する強さ

次のp・mf・fなど、またはフレーズ全体の音楽的な流れに沿って、無理のない強弱を決めます。

クレッシェンドとデクレッシェンドはどう演奏すればよい?

2つの記号は「その場で急に音量を変える」ためのものではなく、音楽の流れに沿って強弱を移り変わらせるための指示です。特に、変化の幅より「開始位置・終点・その間のつながり」を優先して考えると、演奏に取り入れやすくなります。

最終結論

クレッシェンドは徐々に強く、デクレッシェンドは徐々に弱く。記号の描かれている範囲と、次の強弱記号を見て、どの音で目標の強さに達するかを決めましょう。

まずは同じ音4回で「弱→強」「強→弱」を練習し、変化をなめらかにつなげる。

できるようになったら実際の曲の短いフレーズで試し、録音して「途中で急に変わっていないか」を聴き直してください。