楽譜の音符の上に「8va」や「15ma」と書かれていて、鍵盤のどこを弾けばよいのか迷ったことはありませんか。オクターブ記号は、音符を五線譜の外まで並べずに、高い音や低い音を読みやすくするための指定です。最初に「何オクターブ」「どちらの方向」「どこまで」の3点を確認すれば、音を取り違えにくくなります。
8vaは通常、書かれた音より1オクターブ高く、8vb(8va bassa)は1オクターブ低く演奏する指定です。15maは2オクターブ高く、15mbは2オクターブ低くする指定として用いられます。
記号の数字だけでなく、上下の向きと点線の終わりをセットで確認することが読み方の基本です。表記には流儀の違いがあるため、特に五線の下の8vaは注意して読みましょう。
オクターブ記号とは?まず意味を押さえよう
オクターブとは、たとえばドから次の高いドまでの音の隔たりです。ピアノなら、同じ音名の鍵盤を右側または左側へ移動した位置に相当します。オクターブ記号はその移動を楽譜上で指示します。
- 書いてある音名は変わらない:ドはド、ソはソのままです。
- 高さだけ変わる:高い側・低い側の同名音に移動します。
- 音符の長さは変わらない:四分音符なら四分音符のまま、リズムどおり演奏します。
オクターブ記号はシャープやフラットとは異なります。半音の上げ下げではなく、同じ音名の高さをまとめて移す指定です。
8va・8vb・15ma・15mbの読み方一覧
一般的な意味を先に一覧で確認します。表に記した「ド4」は中央のド(C4)、「ド5」はその1オクターブ上、「ド3」は1オクターブ下です。音の番号は説明用の例であり、楽譜によって記載されている元の音は異なります。
| 記号 | 基本の意味 | ド4が書かれていたら |
|---|---|---|
| 8va(ottava alta) | 1オクターブ高く | ド5 |
| 8vb/8va bassa | 1オクターブ低く | ド3 |
| 15ma | 2オクターブ高く | ド6 |
| 15mb | 2オクターブ低く | ド2 |
「8」は8度の隔たり、「15」は15度の隔たりを表し、それぞれ1オクターブ、2オクターブに相当します。数字の8が「8個の鍵盤を移動する」という意味ではありません。
8vaは基本的に1オクターブ上
五線の上に「8va」と書かれ、点線が続いている場合、指定範囲の音符を1オクターブ高く弾きます。たとえば、楽譜上で「ド4-レ4-ミ4」と記された音列なら、実際は「ド5-レ5-ミ5」を演奏します。
音が高い場所に続くときに、加線だらけになるのを防げるのが利点です。五線譜上の音符の位置をそのまま演奏すると、1オクターブ低くなってしまいます。
8vbは1オクターブ下
「8vb」や「8va bassa」と書かれている場合は、通常、1オクターブ低い音を演奏します。「ソ3-ラ3」と書かれていれば、「ソ2-ラ2」です。低音域が加線で読みにくいときに使われます。
記譜の流儀によっては、五線の下に書かれた「8va」だけで1オクターブ下を表す場合があります。常に「8vaという文字だけで上」と決めつけず、記号の位置、作品内の他の表記、楽譜の凡例を確認してください。「8vb」と区別している楽譜ならその指示を優先します。
15ma・15mbは2オクターブ移動する
15maは2オクターブ高く、15mbは2オクターブ低く演奏します。例えば「ド4」に15maが付けば「ド6」です。「8vaよりさらに高い音域を簡潔に表す記号」と考えると覚えやすくなります。
特に鍵盤楽器の広い音域で見られます。記号の書き方には「15va」「15vb」などの変形もありますが、意味と方向を楽譜の指定に沿って確認しましょう。
どの音からどの音まで移す?点線の範囲を読む
オクターブ記号は、記号が書かれた1音だけでなく、後ろの複数の音符に適用されることがあります。点線や終端の小さな縦線を見て、その範囲を読み取ります。
「8va」などの表示の位置を確認します。通常は、その指定が始まる位置の音から読み替えます。
記号から伸びた点線が続く間は、対象の音を指定されたオクターブで演奏します。複数小節にまたがる場合もあります。
点線の終端(必要に応じて「loco」の表示)を確認し、それ以降は通常の記譜位置で読みます。終端にかかる音符の扱いが不明瞭なら、原譜や出版社の説明を確認しましょう。
ある小節で、最初の「ド4-レ4」に8vaの点線がかかり、次の「ミ4」の直前で点線が終わっている場合、演奏する高さはド5-レ5-ミ4です。最後のミまで高い音にしないよう、点線の終端を見ます。
ピアノの鍵盤で読み替える具体例
楽譜に「ド4」と書かれていると仮定して、実際に押す鍵盤を比較してみましょう。中央のド(C4)がわかれば、同じドの鍵盤を探して移動するだけです。
| 楽譜上の指定 | 押す鍵盤 | 移動の方向 |
|---|---|---|
| 記号なし:ド4 | 中央のド | 移動なし |
| 8va:ド4 | ド5 | 右へ1オクターブ |
| 8vb:ド4 | ド3 | 左へ1オクターブ |
| 15ma:ド4 | ド6 | 右へ2オクターブ |
| 15mb:ド4 | ド2 | 左へ2オクターブ |
白鍵だけを数えて混乱するよりも、黒鍵の並びを目印に同じ音名を探すほうが確実です。たとえばドは「黒鍵2つのまとまりのすぐ左」の白鍵です。
ピアノ以外の楽器ではどう考える?
基本の考え方は同じで、五線譜に記された音を指定のオクターブへ移して演奏します。ただし、楽器によって出せる音域が異なり、そもそも楽譜と実音が1オクターブずれる慣習もあります。
- ギター:ト音記号の楽譜でも、記譜音より1オクターブ低く鳴る慣習があります。これはオクターブ記号の臨時指定とは別の話です。
- ピッコロ:一般に記譜音より1オクターブ高く鳴ります。こちらも楽器固有の記譜上の約束です。
- 合奏:実音を合わせる際は、オクターブ記号に加え、楽器の移調・オクターブ移高の慣習を確認します。
演奏中の読み替えと、楽器の標準的な記譜法は別々に考えると混乱しません。
初心者が間違えやすい4つのポイント
記号がなくなっても高いまま弾いてしまう
点線が終了したところで、通常の高さに戻るのを忘れがちです。練習時に終了位置へ鉛筆で小さな印を付けるなど、譜面を見ながら切り替えの場所を把握してください。
8vaと8vbを見間違える
「a」「b」の文字だけに頼らず、記号が五線の上か下か、楽譜全体の表記ルールはどうかを確認します。判断に迷う場合は、前後の音のつながりも手がかりになります。ただし、聴感だけで勝手に指定を変更しないことが大切です。
15maを1オクターブ移動だと思う
15maは通常2オクターブ上です。8vaと見た目が似ていても、移動先は異なります。練習前に数字を声に出して読むと区別しやすくなります。
臨時記号まで変わると思ってしまう
たとえば「ファ♯4」に8vaが付いていれば、演奏するのは通常「ファ♯5」です。音名と半音変化を保ちながら高さを移します。ただし、記譜上の臨時記号の有効範囲は別のルールなので、次の音のシャープやフラットを自動的に引き継ぐと考えないでください。
オクターブ記号をすぐ読めるようにする練習
難しい曲を使う必要はありません。ド・レ・ミの短い音列だけで、記号の読み替えを練習できます。
ピアノや鍵盤アプリなどで、ド3・ド4・ド5・ド6の位置を確認します。鍵盤がなければ、紙にド3~ド6の位置関係を書き出しても構いません。
「ド4-レ4-ミ4」に8vaを付けたつもりで、「ド5-レ5-ミ5」と読みます。次に8vb、15maでも同じ練習をします。
「ド4-レ4」の2音だけに8vaが付き、3音目「ミ4」から解除される例を練習します。演奏する高さを「ド5-レ5-ミ4」と正しく言えれば、範囲の理解が進んでいます。
自分の楽譜からオクターブ記号を1つ探し、記号の意味、開始位置、点線の終わりを指で示します。その後にゆっくり演奏して確認します。
まず8va/8vb/15maの方向を確認し、楽器の音域に合うかを見直します。
点線の始まりと終わりを確認し、解除後の音を元の高さに戻しているかを見ます。
楽器固有の移高・移調表記と、曲中のオクターブ指定を混同していないか確認します。
よくある質問
8vaは必ず上に弾きますか?
五線の上の8vaは通常、1オクターブ上です。ただし、五線の下の8vaを1オクターブ下の意味で用いる楽譜もあります。位置や凡例を含めて判断してください。
オクターブ記号は次の小節にも続きますか?
点線などの指示が次の小節まで続いていれば、原則その範囲にも適用されます。小節線を越えたから自動的に解除されるわけではありません。
オクターブ記号が付くとテンポも変わりますか?
いいえ。オクターブ記号は音の高さを指定するもので、テンポや音符の長さを変える記号ではありません。
オクターブ記号は「方向・段数・終点」で読める
オクターブ記号の読み方は、8va=通常1オクターブ上、8vb=1オクターブ下、15ma=2オクターブ上、15mb=2オクターブ下が基本です。ただし、五線の下の8vaなど、表記の流儀が異なる場合があります。
今日の練習では、中央のドを基準に「8vaでド5」「8vbでド3」を確認し、点線が終わった後は元の高さに戻す練習をしてみてください。